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アルディピテクス(Ardipithecus)

■ラミドゥス猿人(Ardipithecus ramidus)

アルディピテクス・ラミドゥスは1994年に最初に報告されました。2009年、科学者らは「アルディ」というニックネームをつけた部分的な骨格を発表しました。この骨格の足の骨は広がった大きなつま先が固く曲がらない足と組み合わされていることを示しています。これが二足歩行の動作で何を意味するかは未だ不明確なままです。バラバラの標本から再構築された骨盤は、木登りと二足歩行という2つの活動両方への適応を示していると言われています。発見者らは「アルディ」の骨格が、人間とアフリカ猿の共通祖先はチンパンジーに似ていなかったことを反映していると主張しています。この種の犬歯の良いサンプルは、この種の男性と女性にはほとんど違いがないことを示しています。

アルディの化石は、緑豊かな環境で暮らしていたことを示す動物相の化石とともに見つかりました。これは、気候が乾燥して生活していた環境から木がなくなり草原になっていったために人間は直立歩行を学んだという、二足歩行の起源であるサバンナ仮説と矛盾しています。

発見史:
アメリカの古人類学者ティム・ホワイト率いるチームは1992年から1994年の間に、エチオピアのアワッシュ川中流域で最初のアルディピテクス・ラミドゥスの化石を発見しました。それ以来、ホワイトのチームはアルディピテクス・ラミドゥスの化石標本を100以上も明らかにしました。ホワイトと同僚は彼らの発見にアルディピテクス・ラミドゥスという名前をつけました。「ラミド(ramid)」は現地エチオピアのアファール語で「根」を意味しており、この新たな種が人類のルーツに近いことを指しています。そして「アルディ(Ardi)」は「大地、床」を意味しています。発見時、アウストラロピテクス属は科学的に十分確立されていたので、ホワイトはこの新しい属をアウストラロピテクスと区別するためにアルディピテクスという新しい属名を考案しました。2009年、科学者らは1994年に最初に見つかったニックネーム「アルディ」という部分的な骨格(ARA-VP-6/500)の発見について正式に発表・出版しました。

身長
女性:平均120cm
体重
女性:平均50kg

唯一体格を推定した科学者らは、これまでに部分的な女性の骨格 ARA-VP-6/500 (アルディ) に基づいて行いました。彼女は立った高さが120cmで、体重はおよそ50kgだと推定されています。男性の上顎にある犬歯の大きさが女性と比べてあまり変わらないことから、科学者らはアルディピテクス・ラミドゥスに体の大きさに性的二型があったことを期待していません。男性個体の大きさは女性と似ていたと考えられます。これはアルディピテクス・ラミドゥスの男性が、優位に立つために争わないため大きくなる必要がなかった可能性があります。

アルディピテクス・ラミドゥスに残された謎

  1. アルディピテクス・ラミドゥスの骨盤は、この初期人類種が二足歩行していた仮説を支持するか?
    一部の科学者が二足歩行を唯一支持するものだとするこの骨盤は、バラバラな化石から再構成された。
  2. アルディピテクス・ラミドゥスの男性個体の平均的な大きさはどのくらいなのか?
    もしも更なる化石が性的二型の小ささを支持する場合、この男女間の大きさは人類系統樹の底部にいる他の初期人類とはどのくらい異なっているのか?
    そしてそれは何を意味するのか?

どのように生きていたか:
アルディピテクス・ラミドゥスの個体は雑食だった可能性が高いですが、これは彼らが植物・動物・果物など、より一般化した食事を楽しんでいたことを意味しています。アルディピテクス・ラミドゥスは、ナッツや塊茎などの歯を傷つける硬い食物食べていなかったと考えられます。

雑食だったとわかる理由:
アルディピテクス・ラミドゥスの歯のエナメル質は、とても厚くも薄くもありません。エナメル質が厚い場合、それはアルディピテクス・ラミドゥスが硬い物を食べていたことを意味します。エナメル質が薄い場合、これはアルディピテクス・ラミドゥスが果物のような柔らかい食物を食べていたことを示唆します。アルディピテクス・ラミドゥスのエナメル質はチンパンジーと後期アウストラロピテクスやホモ属の中間の厚さを持っており、これは硬いものと柔らかいものが混ざった食物を食べていたことを示唆しています。しかし摩耗パターンと切歯の大きさは、アルディピテクス・ラミドゥスが果物を専門的に食べていたわけではないことを示しています。アルディピテクス・ラミドゥスは後期アウストラロピテクス属の高い咀嚼能力を持っていなかったので、おそらく硬い食物も避けていたでしょう。

進化系統樹情報:
アルディピテクス・ラミドゥスの100以上の標本がエチオピアで復元されました。他の初期人類種と同様に猿のような特徴を持っていましたが、小さなダイヤ型の犬歯や直立歩行の証拠など、鍵となる人間の特徴をも持っていました。これはエチオピアのアルディピテクス・カダッバと同じ場所から見つかったアルディピテクス以前の種に由来する可能性があります。

『アルディ』として知られる女性の部分骨格は、ヒトと他の霊長類の特徴をあわせ持っています。アルディは大きなつま先で枝を掴みながら木々の中を進んでおり、骨盤は猿よりも短く広かった。これは彼女が二足歩行のように歩けたことを示しています。

アルディピテクス・ラミドゥスの驚くほど大量な化石はエチオピアから発見されており、これらはとても原始的な形態を示しています。例えば、アルディピテクス・ラミドゥスは長く曲がった手の指骨や薄いエナメル質、原始的な乳歯の第一大臼歯と第一小臼歯を持っています。しかし猿と比べると、アルディピテクスの犬歯は比較的小さく切歯の形に近くなっていて、第三大臼歯は他の大臼歯よりも比較的大きく細長くなっています。そしてより前方に位置する大後頭孔は二足歩行の可能性をほのめかしています。

一部の科学者は支持する十分なデータがないにもかかわらず、アルディピテクスがチンパンジーとヒトの最後の共通祖先になりうると議論しています。

アルディピテクス・ラミドゥスの標式標本ARV-VP 6/1はアワッシュ川中流域で発見され、年代は440万年前のものとされています。

参考:
・スミソニアン自然史博物館efossils.org

 

■カダッバ猿人(Ardipithecus kadabba)

アルディピテクス・カダッバは二足歩行をしており、体と脳の大きさは現在のチンパンジーと同じくらいだと考えられています。また、後のヒトと似た犬歯を持っていますが、それらはまだ歯列から前に突き出しています。この初期人類種は、わずかな後頭蓋骨や歯のセットなどの化石記録でのみ知られています。大きなつま先の骨は幅が広く、堅牢な外観をしており、二足歩行で地面を蹴って歩き出すために使っていたと考えられています。

1997年に古人類学者ヨハネス・ハイレ=セラシエがエチオピアのアワッシュ川中流域で下顎の欠片を見つけたとき、彼は新たな種を明らかにするとは考えていませんでした。しかし少なくとも5人の個体から11の標本が見つかった後、新しい初期人類の祖先を見つけたと確信しました。手や足の骨、部分的な腕の骨や鎖骨を含む化石は、560~610万年前のものでした。標本の一つであるつま先の骨は520万年前のものとされました。この化石は二足歩行の特徴を持っています。現地から出土した動物相(化石動物)の証拠は、初期人類が森林と草原の混ざった場所に住んでいて、湖や泉などの水源への経路を多く持っていたことを示しています。

2002年、6つの歯がアワッシュ川中流域のアサ・コマ遺跡から発見されました。歯のパターンはこの初期人類化石が独特でアルディピテクスラミダスの亜種ではないことを証明しました。これらの歯に基づき、古人類学者のヨハネス・ハイレ=セラシエ、諏訪元、ティム・ホワイトは2004年、この化石にアルディピテクス・カダッバという名付けた新しい種を割り当てました。「カダッバ」はアファール語で「最古の祖先」という意味です。

体格についてよくわかっていませんが、チンパンジーに近い大きさだと考えられています。

アルディピテクス・カダッバに残された謎

  1. オロリンは日常的に二本足で歩いていたのか?
    今のところ、アルディピテクス・カダッバが直立歩行していた証拠は520万年前のものとされる片足のつま先の骨で、これは他のアルディピテクス・カダッバの標本から10マイル離れた場所から発見されたものである。
  2. もしもアルディピテクス・カダッバが直立歩行していたなら、どんな足取りだったのか?
  3. 二足歩行はアルディピテクスの系統で独立に発達したのか?
    またはアルディピテクス・カダッバは先に登場した2つの人類種、オロリン・トゥゲネンシスやサヘラントロプス・チャデンシスとどのような関係にあるのか?
  4. アルディピテクス系統はアウストラロピテクス系統とはどのように関連しているのか?
  5. アルディピテクス・カダッバの男性と女性の個体はどのくらいの大きさなのか?
    この初期人類種には高度な性的二型はあったのか?

どのように生きていたか:
チンパンジーのように果物や柔らかい葉を主に食する代わりに、アルディピテクス・カダッバは様々な繊維質の食物を食べていた証拠があります。

繊維質食品を食べていたとわかる理由:
アルディピテクス・カダッバの奥歯はチンパンジーのものよりも大きいですが、前歯は狭くなっています。これはこの種が主に口の奥で咀嚼していたことを示唆しています。このような咀嚼は繊維質のナッツのような食べるのが難しい食物に焦点を当てています。

進化系統樹情報:
科学者は元々アルディピテクスカダッバは後期アルディピテクス・ラミドゥスの亜種だと考えていましたが、歯の違いに基づき独自の異なる種としてその後改名されました。

アルディピテクス・カダッバの化石は東アフリカのアワッシュ川中流域とエチオピアのゴナから見つかりました。
アルディピテクス・カダッバは、比較的薄いエナメル質やホーニング複合体の可能性、そして典型的な樹上動物の上腕骨と指骨など多くの原始的な特徴を持っています。しかし、アルディピテクス・カダッバには小さくなった犬歯も持っています。多くの標本よりも東に20kmの場所で見つかった他よりも60万年ほど若い左足の指骨は、猿とアウストラロピテクス・アファレンシスの中間の形態を示しています。(しかし、この指骨は時間的にも空間的にも孤立しているため、暫定的にアルディピテクス・カダッバとされています。)

一部の科学者は支持する十分なデータがないにもかかわらず、アルディピテクスがチンパンジーとヒトの最後の共通祖先になりうると議論しています。

アルディピテクス・カダッバの標式標本ALA-VP 1/20はアワッシュ川中流域で発見され、年代は580~550万年前のものとされています。

参考:
・スミソニアン自然史博物館efossils.org

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