『私たちはどこから来たのか?』これは数千年もの間、人類がしてきた根源的な問いの一つとなっています。物理的人類学者は100年以上の間、我々人類や祖先の頭蓋骨の形など化石の形態学的特徴を研究することにより答えを提供してきました。
過去15年ほどの間、分子人類学者は進化の木を構築する多様な起源を持つ現生人類のDNAを比較しています。変異は我々のDNAに通常の割合で起き、多くの場合子孫に受け継がれます。これらの差異(多形性)は遺伝子型レベルで我々全てを唯一なものにし、これら差異の分析は我々がどのように関連しているかを示すでしょう。しかし、分子人類学者と物理的人類学者によって使われた異なるアプローチは、現生人類が古代の祖先からどのように進化したかについて見解が対立するようになりました。
※人間のDNA変異は関連性や進化の歴史を示すために使用されます。
2つの主要な仮説
2つの主要な仮説は、ホモ・エレクトゥスがアフリカで進化して100~200万年前頃に世界の残りの部分へ広がったことに同意します。ダウいしない場合、我々の最近の歴史に関連します。
1) 多地域進化説:現生人類が世界各地で初期のヒト科から進化したという説
- 現生人類がネアンデルタール人やホモ・エレクトゥスなどの古代の形態から世界の異なる地域で同時に進化したことを示唆している。
- 古代人類と現生人類の間に形態学的特徴の継続していることなどの物理的証拠により支持されている。
- 現在では少数派となっている。
2) 新しいアフリカ起源説:現生人類は世界中に植民する前にアフリカで進化したという説
- 現生人類は10~20万年前の間にアフリカで一度進化したと提唱している。
- 現生人類はその後、古代の形質と遺伝的に混合することなく世界の残りに植民した。
- 遺伝的証拠の多数派によって支持されている。
ミトコンドリアDNA
DNAは私たちの体のすべての細胞の核内部に存在しますが、細胞のミトコンドリアのDNAは進化系統樹を構成するために最も一般的に使われます。
- ミトコンドリアは細胞角の外側に存在する約16,500塩基対の独自のゲノムを持っている。それぞれが13のタンパク質コーディング遺伝子、22のtRNA、2つのrRNAを含んでいる。
- それらは各細胞に大量に存在するため、少量のサンプルが必要になる。
- それらは、密接に関連している個体間の違いを解決することを容易にする核DNAよりも高い置換率(ヌクレオチドが互いに置き換わる突然変異の割合)を持つ。
- それらは母親からのみ遺伝し、直接の遺伝ラインの追跡を可能にする。
- それらは組み換えされない。両親からのDNA部分を混ぜ合わせる核DNAでの組み換え過程(Y染色体を除く)はごちゃごちゃになった遺伝子の歴史を作り出す。
※ミトコンドリアDNAは母体DNAとも言われ、進化系統樹の構築に使用される。
Dループに注目する
DNA研究からの証拠は新しいアフリカ起源説を一般的に支持しますが、これらの結論は統計的支持の欠如を批判されています。この一つの理由は、これらの研究がミトコンドリアゲノムの約7%を占めるDループと呼ばれる小さな部分の多型に主に焦点を当てているからです。この部分が人気な理由は特にその高い突然変異率にあり、科学者がこの比較的短い配列を分析でき、そしてやはり密接に関係している配列の違いを解決できることを意味します。残念ながら、今ではこの高い突然変異率が有益な情報をわかりにくくしていることがますます明らかになっています。Dループ部分からのデータで3つの主な問題が判明しています。
- 逆変異:すでに置換を受けた部位は元の状態に戻る
- 並列置換:独立した系統の同じ部位で突然変異が起こる
- 確率の不均一性:同じ領域の他の部位と比較した時、突然変異を受ける部位で確率に大きな違いがある。データは突然変異の「ホットスポット」の証拠を示している
※ミトコンドリアDNAは高い変異率を示します。
解決策は?
ミトコンドリアゲノムは全体の配置を決定された最初のゲノムの一つですが、技術の進歩がその配列の長さを比較的簡単に得るのを可能にし、全ゲノムに使われる明らかなサイズの研究が行われたのは最近ではありません。この研究は集団遺伝学分野で重要なランドマークになり、おそらく新分野の先駆けともなると思われ、すでに『集団ゲノミクス』という造語を生み出しました。これらの研究者(イングマン等、原文参考資料参照)は全ゲノムの配列決定することは少なからず大変な作業でしたが、重要な利点をもたらすことがわかりました。
- Dループは高頻度で進化していますが、完全なゲノムの大きな長さは多くの有益な多型部位(少なくとも2つの配列の同じ多型を示す部位)の2倍の分析を可能にしました。
- Dループの外部で見つかった逆変異と並列変異の数は実質的にゼロでした。
- ゲノムの残りの進化率は異なる部位間、異なる遺伝子、そして異なる遺伝子複合体間では驚くほど同じでした。
※全ゲノムが配列決定された現在、私たちは現生人類の起源の鮮明な画像を得る必要があります。
集団ゲノミクス
この完全なミトコンドリアゲノムのデータセットで再構築された強固な系統樹は、「新しいアフリカ起源説」に強力なサポートを与えています。ゲノム配列の置換率を決定することで、系統樹の点を導き出して人類の進化と移行での出来事の年表を構築することが可能です。
- 競合している進化論に関連するもっとも重要な日付は、全ての配列が「ミトコンドリア・イブ」の一つに合わさる時である。
- この研究から、新しいアフリカ起源仮説で言われているものと非常によく一致する171,500年前の日付が得られた。
- 多地域説を受け入れるためには、私たちはホモ・サピエンスではなくホモ・エレクトゥスの共通祖先を表すようなもっと古い日付を期待するでしょう。
※新しい研究は、現生人類はアフリカで171,500年前に現れたと示しています。
この研究は唯一で最初のもので、集団ゲノミクスはまだ揺籃期にあります。今後はまだ分析されていない集団からの増え続ける数々の配列と、おそらく異なる遺伝子座からの遺伝子データ間の境界面がさらなる研究を提供するでしょう。例えば、古代人類についての最近の研究は、オーストラリアにて遺伝子データと自然人類学により集められた情報を統合するものが残されています。どのようにいつごろアボリジニがオーストラリアに到達したか、そして進化の歴史と南北アメリカ・インディアンの関連性などの解決されずに残された多くの重要な謎があります。
※アボリジニ民族の進化の歴史はいまだ謎が残されています。
原文:Mitochondrial DNA Clarifies Human Evolution(actionbioscience)
こちらを翻訳する上でDNAについての基礎や用語について知る必要があったので下記を参考にしました。DNAの基礎知識を学ぶために有用です。
参考: ミトコンドリアが明かす-ヒトの起源とアイスマンの子孫- 遺伝学電子博物館
ミトコンドリアの解析は、ミトコンドリアの起源を示すものであり、人類の起源とはあまり関係ないのでは
コメントありがとうございます!
僕自身DNAについてわからない部分が多いですが、どうやらミトコンドリアDNAの解析で進化の速さを調べているようです。
古代人類の化石が見つかることが少ないので、現状で調べられるDNAから考えているのではないかと思います。
真核生物は誕生以来基本例外なく生物はミトコンドリアを有していますので、ミトコンドリアの起源が、それを有する人類の起源をたどる手がかりになるってことです