流れる時間を通じて、歴史は数多くの奇妙な儀式的・魔術的慣習を記録してきました。錬金術師は賢者の石と不老不死の薬エリクサーを見つけることに心を奪われ、魔術師の中には隠された財宝を明らかにする方法を実践する者もいました。これはアレキサンドリア大図書館にて多くの実験や研究、儀式が行われたと言われ、そのうちのいくつかはスフィンクスのような幻想的な生き物の創造をもたらしたと考えられていました。
多数の魔術儀式
魔術儀式は単なる神話ではありません。それらは実際に存在し、単にそれらの象徴的価値のために行われる祭事儀式とは異なり、魔術儀式には2つの役割があります。象徴的な役割だけでなく、意図し望んだ変化をもたらす特定の結果を導くことを目的とした役割です。
魔術儀式の存在と慣習の歴史的証拠は、数々の魔術儀式や慣習・技術を集めた要約から、碑文や寺院、聖域そして儀式目的の特別な道具などを含む魔術慣習が記述された歴史的文章まで世界中に広がっています。このように、時間を通じて、儀式について発見、研究、解釈を扱う考古学の分岐した枝は開発されました。
ケルト人からアフリカ部族まで、アトランティスの伝説の住人から古代エジプト人まで、ヨーロッパの魔女から中国と日本の陰陽師まで、ありふれた金属を純金に変えることに夢中な錬金術師からブードゥー司祭まで、ネクロマンサーからマヤ・アステカの大司祭まで。彼らは皆、日常生活を容易にするために特定の利益を得る自らの欲望のために魔術儀式を使っていました。
大いなる業と不死
マグヌム・オプスまたは大いなる業とは、象徴的に卵の形で表される全ての答えを持つ原始の物質である賢者の石を作成するための錬金術プロセスであり、それによってありふれた金属を金に変換することができると考えられていました。
ある特別な手順によって、錬金術師は飲んだ者を不死にすると言われる不老不死の妙薬を得ることができました。ヨーロッパ、アラブ、中国の錬金術師の多くは、アジアの特に中国で発見したと主張して、数多くの皇帝が永遠に帝国を支配できるようにする妙薬を求めました。しかし彼らが妙薬を手にして飲むとただちに死へと誘われました。永遠の生命という夢は彼らにただ死をもたらしただけでした。
ヘルメス主義の伝統では、大いなる業は個人が霊的に進化できるという象徴的な変質とも言及しています。それでも、錬金術師は大いなる業が魔術と科学のバランスの取れた組み合わせに起因する物理的・化学的プロセスだと考えました。
まず、そのプロセスは各段階に起こる特定の変換を表す4つの色と関連付けられました。ニグレド(黒化)は第一段階に特徴付けられました。第二段階はアルベド(白化)を意味します。第三段階はシトリニタス(黄化)を表し、最終段階はルベド(赤化)を意味します。
錬金術と大いなる業は男性だけのものではありません。グノーシス主義の作家であるパノポリスのゾシモスはその著作の中で、歴史上初めて証明した女性として知られる錬金術師、ユダヤ女のメアリー(もしくは女預言者ミリアム)について言及しています。彼女は基礎的な錬金術の色によって特徴付けられた4つの変換をよく知っていたと言われています。
4つの色と12の段階で永遠に生きる方法
4色は実施されるのに必要な特定のプロセスの結果として与えられます。『エメラルドタブレット(Tabula Smaragdina)』や『サイレントブック(Mutus Liber)』のような数多くの文書は7と14の間で変化するこれらのプロセスを説明して、賢者の石を得ることに繋がる暗号化された秘宝を提供します。
イギリスの錬金術師サー・ジョージ・リプリーによると、大いなる業における12の重要な段階は次の通り。焼成、溶解、分離、結合、腐敗、凝結、注入、昇華、発酵、高揚、増殖、投影。この賢者の石を得る方法はスタンダードなものではなく、錬金術師によって様々でした。
歴史の中で、賢者の石を見つけたと主張する多くの錬金術師たちがいましたが、彼らの中で最も重要な人物がニコラス・フラメルとサンジェルマン伯爵です。フラメルは非常に安い値段でアラブの錬金術師が書いた本を購入しました。手ほどきが助けとなり、彼はその本のイラストの秘密を解読し、大いなる業を完了するためのひらめきに使用しました。錬金術師は今でも生きていて実験を続けていると言われています。彼らが賢者の石を見つけようと見つけまいと、今日でも非常に便利な多くの物理学的・化学的・薬学的な発見が錬金術師によってなされました。
ソロモンの鍵 – 多数の呪術
伝説によるとソロモン王は、神殿の建設から有名なダイヤモンドと金の鉱山の守護までと様々な仕事を与えるために、自らの意のままに天使や悪魔、精霊ジンを操っていました。悪名高い王は、時を越えて知られる『クラヴィークラ・サロモニス』、別名『ソロモンの鍵』という伝説の本の助けを借りてこの全てを行うことができたと言われています。この本は精霊を呼び出して意のままに操る秘法による儀式や呪術の辞典でした。
ソロモンの鍵に描かれた星型図形の一つ。これは『大ペンタクル』として知られ、17世紀イタリアの写本であるボドレアン図書館マイケル写本276に登場する。 説明文にはこうある:『これは一般的なペンタクルで、大ペンタクルと呼ばれる。おそらく緑色に薄く染められた羊皮紙に書かれていた。円には赤色か金色だったと思われる72の文字がある。ペンタクル内の文字は同じ赤色で、全体はおそらく水色で、偉大な神の名前は金色だった。これは全ての霊を招集するのに役立つ。彼らが現れた時、あなたにお辞儀して従うだろう。』 (Public Domain)
ソロモン王の宮廷にて人間、天使、悪魔、そして精霊ジンがすべて集まり、身分や階級がまとめられたと言われています。それぞれに満たすべき役割と仕事があり、もし失敗した場合は王に釈明しなければなりませんでした。同じく『千夜一夜物語』では、王を混乱させたジンが、この本に書かれた魔法式の助けで瓶に詰められ海に捨てられたという罰について語られています。
ソロモン王の宮廷にて人間、天使、悪魔、そして精霊ジンがすべて集まり、身分や階級がまとめられたと言われています。それぞれに満たすべき役割と仕事があり、もし失敗した場合は王に釈明しなければなりませんでした。同じく『千夜一夜物語』では、王を混乱させたジンが、この本に書かれた魔法式の助けで瓶に詰められ海に捨てられたという罰について語られています。
強く賢いソロモン王
ラビの文献によると、ソロモン王は物質的な富の代わりに知恵のためだけに祈る様な謙虚さがあったため、精霊と獣の両方を支配する権利を受け取りました。そして王国は繁栄し、悪魔は貴重な宝石を定期的にもたらして、王国の富と栄光を増していきました。魔法の本の他に、ソロモンは『ソロモンの指輪』として知られる魔法の指輪の持ち主でした。これは彼に悪魔を支配する力を与え、この指輪の助けによりソロモン王は悪魔の王アスモデウスを捕まえることができ、自分に従わせました。また、指輪は『アーンダレーブの指輪』としても知られ、様々な手段でこれを手にしようとした者たちは少なくありません。
伝説によるとソロモン神殿は、シャミールが切り出した石を使い天使と悪魔によって建てられました。シャミールとはソロモンの命令で天国から石を切り出せる怪虫のこと。ソロモンはさらにウザとアザゼルという2連の悪魔を送り出し、自分が知りたいと願う全ての秘密を明らかにするよう強制しました。『教育』という目的では、ソロモンはヒラムを含む友人を地獄への一日旅行へ連れて行くよう悪魔に命じました。
したがって、歴史の中で科学と魔術はどのように混ざりあったのか、客観的研究は魔術儀式をどのように助けたのか、目的達成を助けるための霊による手助けを得る目的の呪術や呪文とどのように国政は手を取り合ったのか、はっきりとわかります。同様に賢者の石と不老不死の妙薬はいまだ見つかっておらず、素晴らしい作品である『ソロモンの鍵』は時間の霧の中に失われ、錬金の技術は忘れ去られていますが、これら全ては今日までも利益を与えてくれる新たな発見を私たちにもたらしたのです。
原文:Ancient Origins