現在のセントルイスに近い、先コロンブス期の都市カホキアにある重要な墳丘墓には、これまでの研究で示されていたような男性だけではなく、男性と女性の両方が埋葬されている。
Credit: William R. Iseminger | Courtesy Cahokia Mounds State Historic Site
北アメリカ最初の町と考えられているカホキアの墳丘墓から女性と子どもの遺体が発見されていますが、以前は男性だけのものであると考えられていた、と研究者は語ります。
ミズーリ州セントルイスに近い、イリノイ州に位置するカホキアの墓を詳しく見たところ、ビーズのブランケットが高位の男性と女性の周囲に絡み合っていたことが明らかになりました。
『ビーズの墓の再検査において、私たちは女性を含む中心の墓を発見しました。』、と研究の共同著者であるイリノイ州考古学調査(Illinois State Archaeological Survey、ISAS)の物理人類学者Kristin Hedmanは声明でこう述べました。『これは予期せぬことでした。』 [Cahokia to Area 51: The 10 Strangest Places on Earth]
2008年に亡くなった考古学者のMelvin Fowler氏は、1967年の尾根のある珍しい塚の発掘調査にて巨大墓所を発見しました。現在はMound 72と呼ばれるこの遺跡には5つの合同墓所があり、それぞれ20体から50体の遺体が入っていました。自身またはこの地の人々によって埋められた、合計270もの他の遺体をFowler氏は見つけました。
科学者はこの墓の年代を、カホキアの権力と影響力の興りとピークの期間である西暦1000年から1200年だとした、と研究者は語りました。その研究者によるといくつかの遺体は積まれた杉の木の上に置かれていて、これは彼らが高位の人間だったことを示しています。
『Mound 72の墓は現在、北アメリカで発掘された中で最も重要な墓の一つだ』と、研究の共同著者でISASのディレクターを務めるThomas Emerson氏は話しました。
墓の問題点
墓所の位置を示すマップ
Credit: Graphic by Julie McMahon
しかしながら、この墓に関するいくつかの分析は立ち止まってはいません。Mound 72はそれぞれ頂上に置かれた2つの中心的な遺体があります。これら遺体は離されてビーズのブランケットで囲まれ、同時代のいくつか他の遺体がそれを囲んでいます。
Fowler氏とその他の考古学者らは、これらの遺体は従者に囲まれた高位の男性2人だと考えました。さらに、マントやブランケットのようなこのビーズは元々鳥の形を模していた、と彼らは話しました。
鳥のモチーフはふつう戦士やネイティブ・アメリカン文化における超自然の存在と関連しており、そのためFowler氏はこの中央の男性2人は神話的戦士長を表していると示唆した、と研究者は言いました。
この解釈が公表されると、多くの専門家は『男性優位のヒエラルキー』としてカホキアを見た、とEmerson氏は話しました。
新鮮な表情
Emerson氏と同僚が考古学者の地図、メモ、報告書などの証拠を再検査した際、彼らはFowler氏とは異なる結論に達しました。例えば、初期の考古学者らはビーズの墓に関連する遺体は6体だと言いましたが、新しいチームは12体見つけました。
さらに、骨格分析は高位のペアは男性2人ではなく、男性と女性だと明らかにしました。権威あるカップル近くの遺体もまた男女ペアで、別のものは子どもであった、と研究者は言いました。
『女性がこれら高位の墓に入っているという事実は、ビーズの墓が持つ特徴の意味を変えました』と、Emerson氏は言います。『今では、男性が主役で女性が端役を演じるという仕組みを持っていないことに気が付きました。そして、私たちがカホキアにいるのは貴族です。男性の貴族ではありません。男性と女性で、彼らの関係性が非常に重要です。』
新たな発見はカホキアで見つかった他のものと一致している、とEmerson氏は話します。
『カホキアで神殿を掘り、その試料を山ほど分析してきた私にとって、その象徴は全て生命の再生や多産、農業です』と、彼は言います。『そこで見つかった小さな石像の大部分は女性です。壺に示された象徴は、水と冥界に関係していることを示しています。今では、Mound 72は残りの象徴やカホキアにおける宗教について私たちが知っているさらに一貫性のある物語に収まっています。』
戦士文化ではない
ビーズのブランケットが戦士のメッセージの一種である可能性は低い、とEmerson氏は言います。代わりに、墳丘墓の分析はカホキアが男女両方を称えていたことを示唆している、と彼は言います。
『早くても1500年代にスペイン人とフランス人が南東部に来た時、彼らは男性と女性両方が階級を持つ社会を確認しました。明らかに、ここでの区分けは性別ではなく、階級です。』と彼は言いました。
『ビーズの墓に戦士の象徴を見た人々は、実際には戦士の象徴が支配的だった数百年後の南東部の社会を見ていて、それをカホキアに投影しているのです。そしてこう言います、「そう、こうでなくては」と。私たちは言います、「それは違う」』、Emerson氏は言いました。
原文:LIVESCIENCE