『ペイガニズム(異教、paganism)』という言葉は、ギリシャ、ローマ、エジプト、スカンジナビアなど、多くの古代文化に属する様々なキリスト教以前の宗教を指します。これはまた、ウィッカの現代イデオロギーや古い慣習の復興版の信奉者などいくつかのサークルも表します。しかしながら『ペイガニズム』の真実は、前述した信条の文脈においては歴史的に不正確な表現なのです。これらの宗教に現在では受け入れられた言葉ですが、この言葉が本当はどこから来たのか、そして最初の意味は何か、可能ならば、世界の宗教的な過去を包括的に理解できるようにすることが検討するために重要です。
『ペイガニズム』という言葉は、作家が当時のキリスト教的信条から古い伝統を区別しようとした、ルネサンス期に復活しました。この言葉自体は『国家の住人』または『田舎者』という意味で文章に沿って大まかに訳された、ラテン語のpaganusに由来します。したがって、最初は宗教ではなく地方の人を表す言葉でした。しかし古代文書におけるその使用法のために、中世の作家はこれが宗教派閥を指したものだと間違って考え、それによって対応する含意を与えました。実際には、今日『異教徒(pagan)』と呼ばれる人々を表すために使われた別の単語があり、その単語もまた一番最初は宗教信奉者のいた場所に由来しました。
プリンストン大学の学者ピーター・ブラウンによると、当初は『ヘレーネ(Hellene)』が『ペイガニズム』の代わりに利用されていました。『ヘレーネ』はἝλλην (Hellas、ヘラス)を指すもので、これは土着の古代ギリシャ語名であり現在はギリシャと呼ばれます。キリスト教が東方ギリシャ地域に出現し始めた時、キリスト教徒から非キリスト教徒を区別するために『ヘレーネ』が使われた、とブラウン氏は説明します。ヘラスから来た人々は古い宗教に忠実なままであるという傾向がありましたが、ユダヤ教とキリスト教の間に衝突が始まり、ユダヤ人派閥は彼らと間違って関係していないことを保証する必要がありました。ユダヤ人派閥の人々はギリシャ出身ではなかったため、『ヘレーネ』が完璧な肩書となりました。
ゼウス神に捧げられた古代神殿。 Credit: MM, Public Domain
西方ラテン世界では、信奉する神々ではなく民族的起源によって自身を指すことが、様々な宗教にとって一般的でした。彼らは単に自身を(自分たちの言語で)ローマ人、ギリシャ人、エジプト人などとして言及し、同時にうまく自身の宗教派閥をほのめかしていました。この分類の形式は主に、人生の政治的・宗教的側面が統一された存在であったためです。したがって、民族を肩書とする伝統は初期キリスト教徒によって続けられているように見えます。古代の情報源が語れる限りでは、『ペイガン(異教徒)』という言葉が代わりに使われ始めたのは後期ローマ帝国時代までではなく、会話や法令などにおいて非キリスト教徒を一緒くたにする簡単な方法だったからでした。これは正確さや敬意ではなくむしろ利便性の問題として評判を集めました。
『ペイガニズム』が多神教を一神教から区別するためのものではなかったことに注意することが重要です。多くのいわゆる『異教徒』は、崇拝する神の数に基づいて自身を区別することが重要だと考えていなかったためで、神々の数はこの言葉に当てはまりません。古代宗教の信奉者たちはキリスト教に対して、その唯一神を好むことに基づく何かを必ずしも持っているわけではありませんでした。各宗派内部の多くのカルトは、その宗教の中心に主神を持っており、その下にいる下位の神々もまた崇拝されていました。肩書としての『ペイガニズム』は、非キリスト教徒(そして非ユダヤ人)を指すことだけを目的としており、彼らをより簡単に破壊され置換されるある単一のカテゴリーに分離するためのものでした。
‘The Triumph of Civilization’ Jacques Reattu作(Wikimedia) 多くの古代宗教は多神教で、神々の殿堂(パンテオン)が信じられていた。
全ての非キリスト教的宗教を一つの傘下に結びつけるこの努力は、実際、初期キリスト教徒が『異教徒』の信条をすっかり取り除くには賢い戦略でした。例として古代スカンジナビア(北欧)の伝統を使うと、初期中世のヴァイキングは彼らの宗教的信奉者にとって本当の名前を持っていませんでした。実際、宗教という単語は未知のもので、彼らにとっては外国の言葉だったでしょう。北欧の部族はギリシャ人やローマ人のように、彼らの儀式、信念、伝統が不明確で流動的に解釈され、厳格に研究されたというよりも口伝で継承されたため、『習慣(customs)』という言葉を好みました。アース神族(エーシル、Aesir)やヴァン神族(ヴァニル、Vanir)、そして古代北欧人が崇拝していた他の様々な存在や神々という考え方を包括する単語はなく、キリスト教徒の作家スノッリ・ストゥルルソンが13世紀に彼らの神話を記録するまで、彼らの習慣を考察する文章はありませんでした。
ストックホルムにあるルーンストーン181の詳細。北欧の神々オーディン、トール、フレイは3人の人間として表されている。 Credit: Berig, Wikipedia
Gareth Williamsの著書Viking: Life and Legendによると、北欧の宗教だと現在考えられているものは実際には『キリスト教宣教師の遺産』であり、彼らの原文の成果『集中した標的』は、自由に崇拝された神々の融合よりもはるかに簡単に除去したり削除することができます。様々な北欧の、そしてその他全ての『異教徒』の伝統を、記録された規則や記号で簡略化された信条に集約することは、初期キリスト教徒に除去や置換するためのより簡単な標的をもたらしました。
『ペイガニズム』というフレーズは様々な古代宗教の信奉者を表すために広く使われますが、その単語がどこに由来するのかと使用法の背後にある誤解を理解することが重要です。あまりにも多くの世紀が過ぎました。『ペイガニズム』という単語はその本来の意味にも関わらず、これらの信奉者にレッテルを貼り続けるでしょう。しかし、その言葉の起源を知るのに遅すぎることはなく、それによって古代信奉者の歴史をより良く理解できます。
トップ画:ケルヌンノス(CC BY-SA 3.0)
原文:Ancient origins