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動物も薬を使う

そもそも人間が薬を使うようになったのはいつ頃なのか。そう思って調べてみると、Wikipediaにはエビデンスが明らかなのは5000年前のシュメールあたりと書いてありました。ただし何のエビデンスなのかはよくわかりません。そこでさらに調べると、先史時代にはあったとか、人間だけでなくサル(霊長類)も植物を一種の薬として使ってるらしいことがわかりました。

動物の植物利用について:「薬草を見つけるチンパンジー」より引用。

私たちは、病気になったときや体の具合が悪いとき、薬を飲んで体調を回復させます。動物の場合はどうでしょうか?犬を飼っている方はよく知っていると思いますが、犬は胃の調子が悪いとき、草を食べて調子を戻します。これと同じような行動を、野生のチンパンジーもすることがアフリカで確認されています。

タンザニアにある国立公園に、弱ったオスのチンパンジーがいました。寄生虫病にかかったらしく、飼育員がいくら餌を与えても食べようとしません。ある日、このオスのチンパンジーは、森である種の植物の茎の皮をはぎ、中の髄(ずい)をしかめっ面をしながら吸っているのが観察されました。次の日、このチンパンジーは体調を取り戻し、元気になりました。

その後の分析で、この草はヴェルノニア(Vernonia amygdalina)というキク科の薬草であり、寄生虫の産卵を抑制する成分が含まれていることが判明しました。さらに、この薬草の葉や樹皮には毒があり、チンパンジーが毒のない茎の髄だけを吸っていた行動が理にかなっていたと言えます。誰かに教えられたのではなく、チンパンジーは本能的に最適な薬草を見つけ出す能力、いわば自己治療能力を備えているのです。

ふむふむ。犬はわかりませんが、猫は毛玉を吐くために草を食べますから立派に植物利用してますよね。これが薬かというとまた違うかもしれませんが、体調を整えるという意味では薬の一種と言えそうです。中でもチンパンジーは、ただ植物を摂取するのではなく必要な成分を選び取っているようです。

また、海外の科学系ニュースサイトNewScientistでも様々な霊長類が植物を使っていることが報告されています。

翻訳した記事:霊長類は出産前に薬を使うより。

マダガスカルのキツネザルは、妊娠した時にセルフ・メディケイト(自己治療)することが知られる最初の動物として明らかにされています。メスのシファカは有毒なタンニンが豊富な植物を出産の数週間前に食べることを、研究者が発見しています。

動物を研究している人たちにとって、サルなどが植物を利用しているのは常識なんでしょうかね。『具合が悪くなったら植物を使う』というのは動物共通に思えて興味深いです。その昔テレビでサルが木の枝をアリ塚に突っ込んでアリを食べている映像を見たことがありますが、森の中で生活している彼らにとって植物を利用することは普通のことなのかもしれませんね。近くにあるものを使ってどうにかする感じなのかな。

ただ、動物たちはこれらの植物が薬草だと理解していたわけではないようです。動物行動を研究するシンディ・エンジェルは著書『動物たちの自然健康法』にて、動物が薬草についての知識を持ってはいないとしています。

書評『動物たちの自然健康法』」より引用。

動物の神話のなかで捨てることができるのは、「動物はどの植物がどの病気に効くかまちがいなく知っている」というものである。 熟練した薬剤師のように特定の病気にたいして特定の療法を選ぶ動物がいるという証拠はほとんどない。 チンパンジーが内部寄生虫の不快をとりのぞくためにつかう毛のはえた葉は三四種にものぼることや、ホシムクドリが巣に運びこむ香りのある植物は個体群によって多種多様であること、 また哺乳類が皮膚をこするのにつかう植物の種類が多いことをみれば、動物が経験にもとづいておおまかに柔軟にみずからを治療していることがわかる。 – 290ページ

動物は様々な植物を使用していますが、経験や感覚によってより快適に生活する方法を選んでいるだけのようです。『使えものならなんでも使う』といったところでしょうか。前述のNewScientistでも、動物たちが植物の効果を理解しているか定かではないとしています。

この植物を食べるシファカは単純にストレスの少ない生息地で暮らしているかもしれないため、これをタンニンによるものだと確信できないことをハフマン氏は受け入れています。また、動物が植物中の有用な他の化合物を求めているかもしれないと研究者は認めています。

動物たちが植物に含まれる有効成分を理解しているかどうか明確ではありませんが、実際に動物が自身の体調を良くするために植物を活用していることは確かなようですね。大雑把に言うとサルから進化した人間も、もしかしたら植物を使う知識を元々持っていたのかもしれません。サルからヒトまでにはかなり長い時間がかかってますし、石器時代の人間は思っていたより高い知性を持っていた可能性もあります。

 

調べてわかったのは、人間は薬を『気付いたらもう使ってた』かもしれないってことでした。ずっと本能的に使っていたものを、近代現代に薬として体系化しただけなのかもしれません。最初は薬というよりは葉っぱとかですけどね。

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